ステンドグラスのある日日(ヒビ)

ステンドグラスのある日日はステキだ!ステンドグラスがもっと身近になることを祈りつつ、ステンドグラスやガラスの未来を明るく楽しく考えるブログ。

「日本のステンドグラスの歴史を大切に残したい!」の件

ステンドグラス 日本風

ステンドグラスのさらなる普及を考えるなら、ステンドグラスが単なるキレイなインテリアというだけでなく、文化的にも価値のあるものと認められる必要があると思います。
今でも芸術的な価値は認められてはいますが、もっと広く深くその価値を認められて欲しいと思っています。
そうすれば今まであまりステンドグラスに関わりのなかった方からの興味関心も高まりますし、文化的・歴史的にも価値のある作品と認められるとさらにさらに影響の範囲は広がると思います。

芸術的な価値が認められた上に、文化的・社会的にも価値があるというところで思い出されるのが「重要文化財」です。
文化庁のホームページによると”建造物,絵画,彫刻,工芸品,書跡,典籍,古文書,考古資料,歴史資料などの有形の文化的所産で,我が国にとって歴史上,芸術上,学術上価値の高いものを総称して有形文化財と呼んでいます。このうち,建造物以外のものを総称して「美術工芸品」と呼んでいます“ということです。
その中で”国は有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定“するということのようです。

重要文化財に指定されることのメリットとして、人目に触れる機会が増えるということもありますが、同じぐらい重要なことが、補修や修理に国からの補助金が使えるという点です。
ステンドグラスは使用している材質上、ケイムと言われる鉛線に亀裂が入ったり、ガラスが割れてしまったりと経年劣化が起きやすいので、どうしてもある程度年数が経ったところで補修・修理が必要になってきます。
伝統的な技法が使われている作品はさらにその傾向が強くなります。
ガラスは当時使っていたものと同じガラスが手に入らないということが少なくありませんが、それでもできる限り当時の風合いを残すための修復が必要になってきます。

ステンドグラス 東京駅

今のところ、ステンドグラス単体で重要文化財に指定されている作品はまだありません(2020年3月時点)。
しかしステンドグラスが設置されている建造物が重要文化財に指定されているパターンがあります。

・青淵文庫、晩香廬(東京都北区)
・世界平和記念聖堂(広島県広島市)
・大阪市中央公会堂(大阪府)
・横浜市開港記念会館(神奈川県横浜市)
・明治生命館(東京都千代田区)
・三越日本橋本店(東京都中央区)
・三井本館(東京都中央区)
・六華苑(三重県桑名市)
・聖徳記念絵画館(東京都新宿区)
・慶応義塾大学旧図書館(東京都港区)
・迎賓館赤坂離宮(国宝・東京都港区)
・国立科学博物館 上野本館(東京都台東区)
などなど。

他にも氷川丸、築地本願寺、東京駅などもステンドグラスが設置されている重要文化財です。

国会議事堂にもステンドグラスがあり、歴史的価値があるにも関わらず選ばれていません。
政治と文化を分けるということのようですが、議事堂が無理ならせめてその中のステンドグラスだけでもと思います。

ステンドグラス 築地本願寺

日本にステンドグラスが入ってきてまだ150年ちょっとということで、欧米に比べると歴史はそれほど深くありません。
しかし黎明期の日本のステンドグラスということで考えると重要な作品がたくさんあります。

例えば日本で一番大きいステンドグラスと言われている国会議事堂にある作品や、ステンドグラスが日本に入ってきて間もない頃の大浦天主堂の作品、横浜英和学院の礼拝堂の作品などは、日本のステンドグラスの歴史を考えると、とても重要です。

日本に入ってきた当時のステンドグラスは、やはりキリスト教の影響の強い作品が多くありました。
しかし日本人独自の作品が増えてくると、西洋諸国と比べ比較的キリスト教とは関係のない自由なモチーフでステンドグラスが作られるようになってきました。
つまり日本のステンドグラスは、西洋のように宗教にテーマを置かず、自然や模様などをモチーフとして選びつつ、そこに和の感性を追加して日本独自の進化を遂げつつあるのではないかと思うのです。
その分岐点になるような作品はぜひ残していくべきではないでしょうか。

ステンドグラス 大浦天主堂

と、このように書いてくると「何がなんでも重要文化財に認定しろ!」というように感じるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。
あくまで「保存」「修復」「多くの人に見てもらい、ステンドグラスを身近に感じてもらうこと」が目的で、そのためにステンドグラスがどういう状態で存在しているのが良いのかを考えているのです。

例えば早稲田大学大隈記念館のように登録有形文化財に指定されるのも良いでしょう。
しかし、登録文化財やら指定文化財やらは、指定されるものによって優遇措置があるものないもの、勝手に手を加えてはいけないものなど条件がいろいろあるようなので、ここではどれがオススメとは書きません。
要は文化的・社会的・歴史的にも価値のあるものとして認められ、その後の修復も念頭に入れつつ、多くの人に見てもらえるような状況になって欲しいのです。

ステンドグラス ウサギ

将来の修復や保存に備えて今のうちから何らかの保護策がステンドグラスには必要です。
あなたの身の回りにあるステンドグラスを改めて見てみてください。もしかしたら社会的・文化的に価値のある作品かもしれません。
そんなステンドグラスを意識的に大切に将来に残していきましょう。