日本の伝統的・文化的なデザインとステンドグラスを掛け合わせたらどうなるのかを検証していくシリーズ。
今回は「組子細工」です。
組子細工とは、釘や金具を一切使わず、小さな木片を木枠の中に組み付けていく日本の伝統工芸技術の一つです。
緻密さや正確な手作業が求められ、さらに使用する木の特性も考慮する必要があります。
まさに建具職人の最高の技と知識と伝統の結晶です。
材料には、日本三大銘木と言われる木曾檜、秋田杉、青森ひばをメインに、屋久杉や神代杉などを使用します。
200種以上もある文様も柄によって込められた意味があり、縁起を担ぐものや魔除け、子孫繁栄など、さまざまです。
ちなみに組子細工の起源は飛鳥時代と言われており、日本最古の組子細工は法隆寺の金堂や五重塔にあります。
このように歴史ある組子細工は、今では地場産業として各地に広まっています。
そんな組子細工ですが、その文様のほとんどは幾何学模様です。
ステンドグラスでも幾何学模様はよく取り上げられるデザインですね。
違うのはステンドグラスはケイムの線も含め、大きめの境界線で構成されているのに対し、組子細工は枠こそ太めの木材を使用しますが、その内側のデザインはとても細かいものになっているというところ。
その細かい中にガラスを嵌め込んでいくのは、、、さすがに難しいですね。
つまりステンドグラスと組子細工の得意な表現方法は真逆と言っても良いでしょう。
ステンドグラスが大きめではっきりしたデザインが多いのに対し、組子細工は細かいデザインを組み合わせていくことで一つの作品に仕上げていきます。
確かにコッパーフォイルを使う方法であれば、細い境界線にして、その小さなデザインひとつひとつガラスを嵌めていくことも可能かもしれません。
でもこれはこれで技術力が必要ですし、強度にも不安が残ります。
作品の枠が鉛製(真鍮製の場合もある)か木材かでも、かなりその作品の印象は変わります。
その材料同士の相性もあります。
例えば鉛製の太い枠に障子のように和紙を貼り付けても、どこかちぐはぐな印象を受けるでしょう。
材料・素材の相性については、別の記事をご覧ください。
www.stained-by-me.com
そんな得意分野が違うステンドグラスと組子細工ですが、お互いが歩み寄ったような作品もあります。
ここからはそんな作品をいくつか紹介していきます。
或る列車
こちらはそのままステンドグラスと福岡県知事指定特産工芸品に指定されている大川組子を合わせた作品。
これ、電車の通路だそうです。
アサイロカードケース
樹脂と組子細工を組み合わせた技法により、このような美しい作品が生まれました。
木材と樹脂も使い方によっては相性が良いですね。
組子と和紙のステンドグラス
ガラスの代わりに色のついた和紙を使うところが素晴らしい!
これこそジャパニーズステンドグラスですね。
組子細工と和紙でステンドグラスみたいなのを作ってみた
youtu.be
動画引用:https://youtu.be/AZDakylS1qA
途中の組子の細かさにも驚きですが、最後の「和風ステンドグラス」は芸術!
動く組子
youtu.be
動画引用:https://youtu.be/uvv5qCev7ok
ステンドグラスも動く作品がありますが、それはまた、別のお話し。
いくつか作品も見てきましたが、やはりお互い近いようで遠い存在かもしれません。
融合させようとすると、どうしても技術的に難しいところが出てきます。
組子細工のデザインを大きなものにして、ガラスを嵌めることができたとしても、それは組子細工の特徴の細やかさが失われることになってしまいます。
逆にステンドグラスのケイムを細かく組み上げて、そこに組子細工の文様を入れ込んでいくのも、手まひまだけかかってしまい、良い作品ができるかどうか、、、。
でもいつかは同じモチーフでステンドグラスと組子細工の作品を比較してみたいですね。